緊張した声で、母が危篤だという。
実感が湧かないが急いで帰る準備をして
テーブルの上にあった手つかずの単行本もバックに詰め込んだ。
電車の中で先ほどの単行本(かすてぃら)を開いてみた。
さだまさしさんの本なので買ってしまったが、内容は確認していない。
読み進んで、驚いた。
さだまさしさんのおとうさんの最後の時を淡々と描いた本だった。
今の私にはとてもタイムリーなお話でびっくり!
当分看病になると思い、着替えなど大きな荷物をもって、
実家の玄関を開けると、危篤の筈の母が立っていた。
後ろに気まずそうな姉と父の姿があった。
よく聞いてみると、
昼前から昼寝して、夕飯の支度もせず
起こしても返事もなく、何の反応もなく
息だけしていたらしい。
父と姉はこのまま苦しまずあの世に行くのだと思い込んだという。
毎食の支度をして、庭の花の世話を毎日している人間がいくら高齢とはいえ
そんなに簡単にあの世には行けないと思うのだが、人生何が起こるか分からない。
今回は笑い話だが、いつか本当のハハキトク、チチキトクが来るのだろう。
元気なうちに一緒の時を多く過ごしたいと思った。